Johannes Brahms: „Die Mainacht“ op.43-2

Johannes Brahms: "Die Mainacht" op.43-2
詩: Ludwig Hölty

 

1. Wann der silberne Mond durch die Gesträuche blinkt, 

銀色の月が低木の茂みの向こうにきらめき

2. Und sein schlummerndes Licht über den Rasen streut,

そしてその月の光が芝生の上を照らし、

3. Und die Nachtigall flötet,

そしてナイチンゲールが歌うとき、

4. Wandl’ ich traurig von Busch zu Busch.

私は(目的地もなく)悲しみながら茂みから茂みへと彷徨い歩く。

 

5. Überhüllet vom Laub, girret ein Taubenpaar

木の葉に包まれ、鳩のつがいがクウクウと鳴き

6. Sein Entzücken mir vor; aber ich wende mich,

彼らの喜びが私の前で; しかし私は向きを変え、

7. Suche dunklere Schatten,

より暗い陰を探す、

8. Und die einsame Träne rinnt.

そして孤独な涙が溢れる。

 

9. Wann, o lächelndes Bild, welches wie Morgenrot

いつ、ああ微笑む絵姿 - 朝焼けのように

10. Durch die Seele mir strahlt, find’ ich auf Erden dich?

魂を通して輝いている - この地球上で見つけるだろうか、君のことを?

11. Und die einsame Träne

そして孤独な涙が

12. Bebt mir heißer die Wang’ herab.

震える より熱く頬を流れ落ちて

ドイツ歌曲: J. ブラームス "Die Mainacht (五月の夜)" ①

 

 

 

みなさまこんにちは。 

 

このサイト開設した大きな理由の一つに、わたしが10年に渡るドイツ留学生活で培ったドイツ語力と、ドイツで生きながら考え、感じた経験をどのようにか文章にできないか、と思い立ったことがあります。具体的なことは、また別の記事にて書かせて頂きたいと思っています。その中に、ドイツ歌曲についてがテーマの一つにあります。

私は声楽が専門です。ドイツに留学できたことで特に集中して学べだものは、ドイツの声楽芸術、ドイツ歌曲。どちらかと言うとオペラよりも好きな分野です。オペラを勉強するためにイタリアに留学したか?と聞かれると、正直分かりません。自分の大学の先生がドイツで活躍されたのが、ドイツを留学先に選んだ一番大きな理由だと思っていますが、決して間違った選択ではなかったなと、10年ドイツに住んだ今でも思うことができます。

 

ドイツで生活し、ドイツの空気に触れながら、現地の人たちと交流する中で文化を学び新しい経験は、私たちの心に振動を与えます。みなさんも、普段生きている中で、小さなことに感動したり、赤ちゃんの笑顔に癒されたり、普段近くにはないところに行って心が癒されたり、新しい人と話をして全く違った考えを聞いて価値観が変わったと言うような経験はありませんか。

音楽、つまり音は、その人自身から発信されます。音楽への感性なども大切かもしれませんが、音楽に必要なのは心、音色にもその人が現れます。

生きてきて経験したことは、私たちから発信される音楽の音色の中に、必ず生きています。

 

というわけで、今回は、ドイツリートを一曲紹介させていただきたいと思います。

 

Die Mainacht

ブラームスの有名な歌曲 "Die Mainacht (5月の夜)" です。この歌曲は、私が日本の大学で勉強していたときに、先生から課題として渡された歌曲のうちの一つです。当時は、発音をどのようにか真似て、Rは巻いて発音、母音によっては同じOでも開いた母音と閉じた母音がある、など、分からないなりに勉強していた覚えがあります。

 

ブラームスは、ドイツ三大Bと言われている3人の大作曲家のうちの一人(残りの二人はベートーベンとバッハ)で、歌曲はもちろん、ピアノ曲や室内楽曲、交響曲など数々の素晴らしい作品を残しました。私は声楽専門なので、彼の作品で聴くのはもっぱら歌曲ばかりですが😅 ブラームスの音楽は、フランス音楽のように風に身を任せてキラキラと輝くような流麗な感じではなく、地面に足をついて、音楽の骨組みがしっかりと聞こえてきて、心に響くメロディーが真剣で美しいです。

 

歌曲が作曲されるときは、出来上がっている詩を作曲家が読んで、インスピレーションを受けて作曲に取り掛かると言う手順ですが、楽譜を見てみると、ブラームスが詩から受けとったものはとてもしっとりとした雰囲気の中で霊的で、詩を語る人物の、自身の中の悲しみをひたすら感じ続けつつも希望を失わない音楽は、本当に素晴らしいものだと思います。

 

まずは、詩をひと通り読んでみましょう。

 

Die Mainacht, op.43-2

五月の夜 作品43の2

 

Wann der silberne Mond durch die Gesträuche blinkt, 

銀色の月が低木の茂みの向こうにきらめき、

Und sein schlummerndes Licht über den Rasen streut,

そしてその月の光が芝生の上を照らし、

Und die Nachtigall flötet,

そしてナイチンゲールが歌うとき、

Wandl’ ich traurig von Busch zu Busch.

私は(目的地もなく)悲しみながら茂みから茂みへと彷徨い歩く。

 

Überhüllet vom Laub, girret ein Taubenpaar

木の葉に包まれ、鳩のつがいがクウクウと鳴き

Sein Entzücken mir vor; aber ich wende mich,

彼らの喜びが私の前で; しかし私は向きを変え、

Suche dunklere Schatten,

より暗い陰を探す、

Und die einsame Träne rinnt.

そして孤独な涙が溢れる。

 

Wann, o lächelndes Bild, welches wie Morgenrot

いつ、ああ微笑む絵姿 - 朝焼けのように

Durch die Seele mir strahlt, find’ ich auf Erden dich?

魂を通して輝いている - この地球上で見つけるだろうか、君のことを?

Und die einsame Träne

そして孤独な涙が

Bebt mir heißer die Wang’ herab.

震える より熱く頬を流れ落ちて

 

 

いかがでしょうか?詩を読んで何を感じますか?

この歌曲は、私が日本の大学で勉強してきたときに先生から課題として渡された歌曲のうちの一つです。当時は、発音をどのようにか真似て、Rは巻いて発音、母音によっては例えば同じOでも開いた母音と閉じた母音がある、など、分からないなりに勉強していた覚えがあります。

 

日本語の詩と同じく、ドイツ語の詩も普段会話で使われない様な表現や言葉の順で書かれることが多く、さらにそれを日本語で分かりやすく、意訳になりすぎず且つ詩の雰囲気を壊さないように訳すのは結構難しいです。日本語で改めて歌われる歌詞を読んでみると、こんなことを言葉にする人が世の中にいるんだと感動しました。しかもこの詩を書いたのは男性。色んな詩に今まで出会ってきましたが、多くは恋愛や愛する女性、最愛の人が亡くなったりなど、相手が詩の中に存在することが多いと思われます。直接詩の中に人物が書かれていなくても、詩の言葉の裏に潜んでいる本当の意味を探っていくと真実が見えてくることも多々あるのです。

 

単語の意味を細かく見てみましょう。一つ一つの単語をきちんと解説できるように勤めてみました。本当はこの回で詞の内容にも触れたかったのですが、長くなるので次回ということで。

Wann "いつ"という意味の疑問詞。

silbern "銀色に輝く"。silbernEのEは、der Mond で男性名詞のため、形容詞が間に入る場合、少し変化してEがつきます。

Mond  "月"。ドイツリートにはよく出てきます。der Mondで覚えてください。冠詞は、名詞を学んだときに一緒に覚えてしまうのが一番です。後からやろうとすると、適当に冠詞を言っても皆さんには通じますが、きちんと勉強していると、ドイツ人は口には出さなくても、ちゃんと聞いていますよ笑

durch "間" いつも四格の単語とくっつきます。

Gesträuche "背の低い茂み"  der Gestrauch の複数形

blinkt "きらめく" blinkenが、主語の月に反応して変化。

und "そして"。基本笑

schlummerndes "うとうとしている、まどろんだ" schlummern(まどろむ)という動詞が、英語の"-ing"の意味が少し混じったような状態になります。現在進行形とは少し違うんですが感覚的に結構近いと思います。最後のesは、この単語が説明したLichtの格が中性dasなので。

Licht "光" 

über "〜の上に"という意味の前置詞。

Rasen "芝生" der Rasen. Das Rasen(疾走すること)も、実はあります。動詞rasen(疾走する)が名詞化したもの。しかし歌詞とは全く関係ないです笑

streut "照らす" streuenが、Lichtに反応して変化

Nachtigall "ナイチンゲール" ドイツリートでは男性を比喩して使われることが多い。

flötet "小鳥がさえずる" flötenが原型。Flöteは楽器のフルート。フルートで何かを吹くという意味もあります。

wandeln ここでは"(特別な目的もなく)ゆっくり歩く"という意味です。

ich "私" 私たち人間の基本です。

traurig "悲しい"

von..zu... 〜から〜へ

 

Überhüllen "覆って包む、覆う" über が動詞、形容詞とともに使われると、超過、覆って、の意味を含んだ

Laub "木の葉"

girren "鳩がくうくうと鳴く" 

  

sein "彼らの" ここでは鳩のつがい

Entzücken "恍惚、喜び" 

mir "私" の3格。

vor "〜の前へ" 

aber "しかし" 

wende "向きを変える" sich wenden で、再帰動詞。

suche "探す" suchen が原型

dunklere "暗い" dunkel が原型

Schatten "影" 

einsame "孤独な" einsam 形容詞

Träne "涙" 泣くという単語はちなみにweinen。

rinnt "(液体や粒状のものが緩やかに)流れ出る" rinnen。

o "おお、ああ" 感嘆です。

lächendes "微笑みながら" lächelnd が原型。文法は、上のschlummerndで説明したのと同じです。

Bild "絵姿" 写真という意味もあります。その場合はFoto(英語のPhoto)も使われます。

welches "" 前にあるBildの冠詞がdas なので、それを説明するための関係詞。語尾にesがつく。前にdasが出てきているので、同じ単語が連続で出てくるのを避けるために使われます。

wie "〜のような" 英語だとlikeでしょうか。

Morgenrot "曙光"

durch "〜と通して"

Seele "魂" 

strahlt "光り輝く" strahlenが原型。

bebt "" beben. 地震は、日本語でもそうですがドイツ語でもdas Erdbeben と言われます。

heißer "熱い" heiß が変化なしの形

Wang' "頬" Wange というもともとの単語が、メロディー作曲の際に語尾を省略

herab "〜から下に" ここでは、涙が下に落ちるというのを表現するために使われている。

 

意外とたくさん単語ありますね!笑 

今回初めて、日本語できちんと単語の説明を試みました。意外と文章にするのは難しいです。

 

とりあえず今回はここまで。

次回は、詩から伺える情景と読み手の気持ちに注目してみたいと思います。

 

 

 

 

ブログ始めました!

みなさまこんにちは。

 

インターネットが普及する中、そしてたくさんの方達がブログを書いて世の中の方達に読んでもらっている中、私はいつもブログというものを避けてきました。単純に、誰かに自分の書いた文章を読まれるのがあまり好きではなかったのです。

 

しかし、年月が経つとともに、その考えは変わってきました。今では、なぜもっと早くブログを始めなかったんだろうと思うくらいです。コロナが原因で、多くの制限が普段の生活にかかったことも、考えが変わった理由の一つかもしれません。

 

ここで少しだけ自己紹介…

私はドイツ・ワイマール在住のソプラノ歌手・佐々木麻衣です。

出身は岡山県倉敷市。岡山生まれの岡山育ちです。正確には倉敷市出身です。

 

高校は岡山城東高校音楽系。音楽系同志とは今でもLINEで繋がっています。

 

大学は沖縄県立芸術大学音楽学部声楽専攻。素晴らしい環境と先生方に出会い、充実した大学生活を送りました。

 

2010年5月にドイツに初上陸しました。最初の街はミュンヘン。ドイツ語が全く話せず、文化の違いに感動したりそれと戦ったりしながら、徐々に自分のペースを見つけていきました。

 

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ミュンヘンの市庁舎。

町の市庁舎の大きさで、街の規模が分かります。普段は観光客であふれています。

 

2014年秋より、ワイマールにある音楽大学で声楽を勉強しています。正確には、すでに勉強は終えているのですが…EU外の外国人という立場上、滞在許可(ビザ)の事を常に考えていないといけないので、学生ビザをまだ発行して頂いている身分です。

 

趣味は…散歩と食べることでしょうか笑。

ドイツ語で散歩する(spazieren gehen)という動詞は、文法的に使い方が難しいにも関わらず、語学学校の初心者コースでかなりはじめに学ぶ、普段からよく使われる重要単語です。

 

私のことを個人的に知っている友人たちにとっては、"私=食べる" のイメージがあっても過言ではないくらいに食べることは好きです。量も食べるんですが、幸せそうに食べるというスタイルが色んな人から、一緒に食べていると食欲が湧いてくるという(褒め)言葉を頂きました。ありがとうございます笑。

 

というわけで、今回はこの辺りで失礼します…次回は、ドイツリートがテーマです。